ミニレクチャー No. 67 痙縮について

痙縮について

 

痙縮とは、筋が勝手に収縮し続ける状態です。脳卒中や脊髄損傷などの中枢神経の疾患で起こります。痙縮の仕組みを理解するには「伸張反射」について知る必要があります。伸張反射とは筋が引っ張られた時に、まさしく反射的に筋が収縮することです。この反射を脳からの神経が制御することで、私たちは程よく筋が緊張した状態を保ちスムーズに体を動かすことができています。

 

ところが脳卒中や脊髄損傷で脳からの神経による制御がダメージを受けると、伸張反射が過剰に起こる状態になり、筋が収縮し続けることになります。無理やり伸ばそうとすれば伸張反射を引き起こすため余計に筋の抵抗が強くなります。脳卒中では腕は曲がる方向の筋に痙縮が起こりやすく、あしは伸ばす方向の筋に痙縮が起こりやすいです。

 

痙縮の程度は人によって様々です。程度の評価方法としてMAS:Modified Ashworth Scaleが世界的に用いられています。

 

0 筋緊張の増加なし

1 罹患部位を伸展や屈曲した時、可動域の終わりに引っかかるような感じや、わずかの抵抗感を呈する軽度の筋緊張の増加

1+ 可動域の1/2以下の範囲で引っかかるような感じの後にわずかの抵抗を呈する軽度の筋緊張の増加

2 緊張はより増加し可動域のほとんどを通して認められるが、罹患部位は容易に動かすことができる

3 緊張の著しい増加で他動的に動かすことが困難

4 罹患部位は屈曲や伸展を行なっても固く動きがない状態

 

脳卒中でも脊髄損傷でも、はじめのうちは麻痺した筋はまったく筋緊張のない弛緩した状態で、時間経過とともに筋緊張が高くなってゆきます。 

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痙縮の治療には筋を弛緩させる内服薬、ボツリヌス毒素の罹患筋への注射、神経ブロック、外科的な治療、バクロフェン髄注療法などがありますが、重要なのは、痙縮によって引き起こされる、痛みや機能の障害(関節可動域の制限や変形)、日常生活動作や社会参加の制限を予防することです。