ミニレクチャー No. 61 PICCとは?

PICCとは?

 

「ピック」って聞いたことありますか。これは、最近流行?の腕から入れる長いカテーテルで、英語でPeripherally Inserted Central Catheterといい、頭文字をとって”PICC”なのでピックと呼ばれています。2010年に保険適応になってます。

 

そもそも、中心静脈カテーテル(Central Venous Catheter:CVC)とは、鎖骨下静脈や、内頸静脈などから刺して、心臓の近くまで届くカテーテルです。浸透圧が高い(≒濃い)点滴を、血流の多い大きな静脈へ直接注ぐことができます。普通の抹消からの点滴からは、血液と同程度の浸透圧のものしか投与できませんので、多量の栄養点滴や、抗がん剤の投与などではCVCが用いられます。

 

CVCは体の中心に近いところから針を刺すので、刺し間違えると重大な合併症が起こることがあります。例えば、鎖骨下静脈穿刺では肺に刺してしまって気胸が、内頸静脈では間違って動脈を刺して血腫が出来て気道が塞がって窒息、なんてことが起こる可能性があります(めったにないですが)。

 

そんな中、彗星の如く現れたのがPICCです。これはおもに肘や上腕の静脈から長いカテーテルを挿入して、心臓の近くの太い静脈までその先端を届かせます。刺すのが腕ですので、CVCの様な危険がありません。さらに、特定の研修を受けると看護師も挿入することができます。

 

もちろん良いことばかりではありません。CVCでもPICCでもカテーテルの先端は心臓の手前の上大静脈にあるのが理想的ですが、PICCではカテーテルが長いぶん、先端の位置がおかしなところになったり、血管の壁を傷つけたりする可能性があります。またカテーテルが長いことで血栓が出来やすいという問題もあります。そして、PICCのキットは高額(約2万円、CVCキットは2千円くらい)であるため高くつくという問題もあります。

 

PICC挿入後の管理については、まずカテーテル内腔の維持が大事です。薬剤投与後の生食フラッシュを行います。カテーテルを使用していないときは1週間に1回生食フラッシュを行います。また、CVCと同様にPICCでも「カテーテル関連血流感染CRBSI」を起こさないように、無菌的管理を徹底する必要があります。腕にくっついているので普通の点滴のように気軽に扱っていたら菌血症になった、なんてことがないように注意しなければいけません。

 

参考文献:

井上 義文:PICC 末梢挿入式中心静脈カテーテル管理の理論と実際, じほう, 2017.