ミニレクチャー No. 24 老年症候群とは?

老年症候群とは?

 

「歳をとると3つのことが始まる。まずは記憶力が落ち、残り2つは思い出せない」

――Sir Norman Wisdom

平成29年の厚労省統計によると、回復期リハ病棟に入院する患者の67%は75歳以上の高齢者だそうです。高齢者はこれまでの病気や怪我、そして加齢そのものによって認知機能や身体機能が低下しています。そこに、回復期リハ病棟に入院するに至った疾患(脳卒中や骨折など)が加わったことで、今まで何とか生活できていた高齢者も、もはや日常生活への復帰が不可能と思われる程に一気に能力が低下してしまいます。すると、褥瘡、尿失禁、生活機能低下、転倒、せん妄といった症候を起こすことがあり、この状態を「老年症候群」といいます。

この老年症候群の状態にある高齢者は、若年の健常な人が同じ病気になった場合とは、症状表れ方や程度が異なります。例えば肺炎になれば、咳や痰などの呼吸器症状が出るのが一般的ですが、老年症候群の状態では、呼吸器症状ではなく意識障害やせん妄の様な中枢神経症状が前面にでることもまれではありません。つまり、ひとつの臓器やひとつの機能だけをみて評価・治療しようとしても上手くいかないのです。

この老年症候群を評価する方法として、包括的高齢者評価(comprehensive geriatric assessment:CGA)というものがあります。臓器別でなく機能別に評価する方法です。CGAの評価項目には、認知機能、気分障害、生活機能、歩行機能、栄養状態、体重減少、薬剤、並存疾患、排泄機能、視覚、聴覚、終末期の考え方、などが含まれます。そして評価に基づいて、入院中の老年症候群の増悪予防対策を行います。

入院生活における老年症候群のリスクと予防策

薬剤の副作用・・・投与薬剤の吟味をする

院内感染・・・・・床上安静を最小限にする、尿道カテーテルを避け間欠導尿を実施、抗菌薬は必要な時に限定、手洗いを徹底

低栄養・・・・・・過度の制限食を避ける、早期の栄養評価

褥瘡・・・・・・・リスクの把握、毎日の皮膚チェック、適切な体位交換

排便排尿障害・・・定期的なトイレ使用、尿道カテーテルを避ける、早期に便秘治療薬を使用、副作用として便秘・尿閉のリスクのある薬剤を把握

せん妄・・・・・・リスクの把握、床上安静を避ける、見当識を刺激、夜間覚醒を避ける

転倒、活動低下・・リスクの評価、身体拘束は最小限に、転倒リスクを増大させる薬剤を避ける

 

参考文献:反田篤志 監修:あめいろぐ ホスピタリスト, 丸善出版, 2018.