ミニレクチャー No. 34 リハにもM&Mカンファレンスを

リハにもM&Mカンファレンスを

 

医療行為を行えば、合併症や失敗はどうしても起こります。リハビリテーションも例外ではありません。そもそも人は、失敗から学んで成長します。だからと言ってどんどん失敗して良いわけではありません。ひとつの失敗事例を皆で共有し、病院全体として同じ失敗を繰り返さないために、現在のシステムに問題がないか、対応は現在の標準的な治療・ケアに合致しているかなどについて検証することが大切です。

 

その様な場として、M&Mカンファレンスというものがあります。Mortality(死亡) & Morbidity(合併症)カンファレンスの略で、主に救急の現場などにおいて、不幸にも死亡したり、合併症がおきたりした症例について、皆で振り返り、原因や、どうすべきであったかについて議論を行います。1900年代にアメリカで始まったものが最近は日本でも行なっているところが増えています。重要なことは、決して個人を責めたり、失敗を批判する場ではない、ということです。そもそも事故や失敗はたったひとつの原因だけで起こることはまれで、たくさんの要因が不幸にも重なった時に、事故が起こります。

 

リハでは救急の現場のような、死亡や重大な合併症が起こることはまれですので、一体何が失敗例なのかはっきりしません。例えば、ある患者さんが歩行自立できなかったとして、それが失敗なのか、それ以上やりようがなかったのかはっきりしません。または、患者さんが夜間に徘徊して転倒したら、事故であることは間違いありませんが、もはやよくあることすぎて検討する気にもならないかもしれません。

 

そこで、M&Mカンファレンスを行ってみてはどうでしょうか。目標を達成できなかった、予想外のアクシデントが起こった、などの症例について、月に1回でも皆で振り返り、検討し次の患者さんに活かすために、運用システムには不備がなかったか、標準的な対応ができていたかについて検討をする絶好の機会になるのではないでしょうか。回復期リハビリテーション病棟でのM&Mは、「まじ(Maji)でまいった(Maitta)症例」カンファレンスといった感じで。

 

このM&Mカンファレンスを開催するには、普段から、患者さんそれぞれに明確な目標をもっていなければ、そもそも後から振り返ることもできません。また、診療内容についても今現在何がエビデンスのあるリハなのか、自分の行っている診療に対する裏付けをもつことを習慣化する必要があります。つまり、M&Mカンファレンスを定期的に開くことで、システムエラーを改善する機会になりますが、さらに普段の思考や行動も変化します。

 

繰り返しますが、M&Mカンファレンスは、上手くいかなかったことを非難する場ではありません。病院全体の安全対策の向上と、スタッフ教育のための場です。まだリハ業界でどこも行っていない新しい試みを初めてみませんか?