ミニレクチャー No. 53 レビー小体型認知症について

レビー小体型認知症について

 

認知症のひとつである「レビー小体型認知症」の特徴は、認知機能障害と運動障害(パーキンソン症状)の両方がみられることです。特徴は以下の通りです。

 

■動揺性のある認知障害

認知機能障害は時間や日によって変動します。全く話が通じず、周囲の環境が理解できず、意識レベルが低下した状態の時があると思えば、覚醒レベルが高く記憶や理解も良い時があったりします。

 

■幻覚

鮮明で詳細な幻視が繰り返し出現します。「女の子が3人遊びに来ている」「天井に虫がいる」「誰かが家の中にいる」などです。

 

■パーキンソン症状

パーキンソン症状とは安静時振戦、固縮、無動、姿勢反射障害などですが、レビー小体型認知症では、固縮と無動が目立ちます。

 

レム睡眠行動障害

夜間、夢を見ている時に大声や奇声をあげたり、怖い夢をみて壁を叩いたりします。

 

抗精神病薬に対する過敏性

中枢神経に働く薬に過敏に反応します。風邪薬や胃薬にも過敏なことがあります。投与量は通常の1/2~1/3に調整します。

 

■繰り返す失神・失神

自律神経の障害による起立性低血圧、姿勢反射障害によるバランス不良のため、失神や転倒を繰り返します。

 

治療には、コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、リバスチグミン)などの抗認知症薬が有効なことがあります。パーキンソン症状にはパーキンソン治療薬が有効なこともありますが、かわりに幻覚妄想が悪化する場合があります。抗精神病薬は効きすぎて副作用の錐体外路症状(=パーキンソン症状)が出たり、鎮静が強くなったりするので注意が必要です。一方で抑肝散が著効することがあります。幻覚は生活に支障をきたさないなら薬で無理に抑制する必要はありません。いずれにせよ薬で解決できることは限られています。運動や生活環境の調整、看護・介護まで、出来ることを寄せ集めて取り組む必要があります。

 

参考文献:

大庭建三:すぐに使える高齢者総合診療ノート 第2版, 日本医事新報社, 2017.