ミニレクチャー No. 49 脆弱性骨折について

脆弱性骨折について

 

脆弱性骨折(特発性骨折ともいいます)は、ごく小さな力が外から加わった時、あるいは明らかな力が加わったわけではないのに、日常生活動作程度のストレスで生じた骨折のことを言います。

脆弱性骨折を起こす原因としては、骨粗鬆症甲状腺機能亢進症、原発副甲状腺機能亢進症、性腺機能低下症などの内分泌疾患があります。その他には、がんの骨転移やページェット病という骨の病気があることによる病的骨折、そして放射線治療後に起こる骨折があります。

特別養護老人ホームやナーシングホームから、脆弱性骨折に関する複数の報告がされています。その報告で多い骨折部位は大腿骨頚部、 大腿骨遠位部、脛骨・腓骨、上腕骨、橈骨・尺骨などです。患者さんは80歳以上の女性高齢者がほとんどで、多くの人は長期間寝たきり状態で歩けなくなっていて、骨粗鬆症がありました。そして、明らかな転倒や転落の既往はなく、認知症があり、ベッドから車椅子への移動には介助が必要な状態でした。ADL評価をすると50~80%の点数の患者さんに多くみられています。つまり、完全にベッド上寝たきりの人やADLがほぼ自立している人には起こりにくい、ということです。下腿の骨折は螺旋状の骨折であることが多く、移乗の際にフットレストあるいは車輪に足が引っかかり、回転性の外力が加わったのではないかという考察がなされています。

まとめると、女性高齢者で、下肢に負荷をかけることがなくなり長期間経過した人は、骨粗鬆症などで骨の外力に対する反発力が弱まっているため、わずかな外力が加わっても骨折を生じる可能性があると考えて、ベッド・車椅子間の移乗の介助をするときには、特に注意する必要がある、ということになります。

最近の車椅子はフットレストを回転させ、移乗の際にあしが引っ掛かることがないようにできるものがほとんどなので、上記のような危険因子をもつ患者さんを介助で移乗する場合には、一手間かけて、このような車椅子の機能をしっかりと使用することが大切です。それでも危険な場合は、二人介助で行ったり、トランスファーボードを使用したりする方が望ましいかもしれません。

さらに骨折を予防するために、リスクのある女性高齢者では骨粗鬆症の診断を積極的にすすめ、骨粗鬆症治療薬を開始し、また適切なカルシウムとビタミンD3の補充を行い、適切な骨密度を維持するように務めることが重要です。

 

参考文献

福間 誠之:特別養護老人ホームでみられた脆弱性骨折, 洛和会病院医学雑誌, 26 : 51-55, 2015.