ミニレクチャー No. 56 急変対応:血圧が下がったらどうする?

急変対応:血圧が下がったらどうする?

 

回復期リハ病棟に入院している患者さんの中には、血圧が安定しない人がいます。血圧が下がりすぎると、脳の血流が保てなくなり意識障害が起こり、転倒やけがにつながる可能性があります。「リハ安全ガイドライン」では、安静時収縮期血圧が70mmHg以下では積極的なリハを実施しないことになっています。

 

血圧は血圧計がなくてもおおまかな値を知ることはできます。手首の橈骨動脈の拍動を触れることができれば収縮期血圧は80mmHg以上あり、頸動脈で触れることができれば60mmHg以上はあるとされています。

 

血圧低下の原因は、頻度が高いものとしては、起立性低血圧、血管迷走神経反射、貧血、脱水、薬剤性、本態性低血圧などがあります。緊急の対応が必要なものには、ショック、不整脈、徐脈、心不全肺塞栓症などがあります。

 

血圧低下が起こった時には、まずは患者さんを寝かせて、あしを心臓より高い位置にします。そして周囲に協力を依頼し、患者さんの評価を行います。

 

まずは意識状態のチェックです。意識がない状態ならば、次に呼吸状態のチェックをします。呼吸をしていなければ、救命処置を開始します。意識はないけど呼吸は保たれている場合も至急医師に連絡します。

 

意識がある場合は、緊急の所見がないかどうか評価します。胸部症状や、呼吸困難、麻痺や失語などの神経学的異常、バイタルサインの異常(頻脈や呼吸数の増加、酸素飽和度の低下など)です。これらの所見があれば医師に連絡しつつ、待つ間に症状がどの様に変化するか(改善するのか悪化するのか)を観察を続けます。

 

緊急の所見がなく血圧が低くなっただけであれば、低下の原因の多くは起立性低血圧や、血管迷走神経反射のことが多いです、血管迷走神経反射とは、ややこしそうな名前ですが、よくある事で「学校の集会で突然倒れる」「採血で針を刺されて倒れる」というやつです。痛みや長時間の立位・座位・疲労、不眠などの精神的・身体的ストレスが原因となります。血管迷走神経反射による低血圧は数分で改善しますので、血圧を再度測定します。

 

起立性低血圧の原因は、自律神経系に障害を生じる疾患(脊髄損傷、パーキンソン病)や、循環する血液量が減少した状態(貧血、脱水)などです。この場合、段階的に起立した姿勢にならしてゆく必要があります。

 

参考文献:

亀田メディカルセンター リハビリテーション科 リハビリテーション室 編集:改訂第2版 リハビリテーション リスク管理ハンドブック, メジカルビュー, 2014.