ミニレクチャー No. 46 急変対応:当直時間帯のドクターコール その前に

急変対応:当直時間帯のドクターコール その前に

 

患者さんの状態が突然悪くなった時、明らかに自分ひとりの手で負えないと思った時、ドクターコールをすることになりますが、その前に抑えるべきポイントがいくつかあります。特に、当直時間帯などで、入院患者さんのことをあまりよく知らない非常勤医師などにコールする場合を想定しておけば、どんな状況でも対応可能です。

 

まずは、何はともあれ人手を集めます。それから、バイタルサインをチェックします。バイタルサインには意識状態、血圧、脈拍、体温、呼吸数、酸素飽和度が含まれます。普段のバイタルと比較して差があるのかないのかについても意識しておくことが重要です。バイタルサインのなかで、大事なのですが抜け落ちやすいものとして「呼吸数」があります。1分間に何回呼吸しているかを表す数字で、体温計や血圧計、パルスオキシメーターの様な機械なしで測定できるのですが、だからこそ抜け落ちやすいです。

 

正常では呼吸回数は1分間に20回程度ですが、息が苦しくなると呼吸数は増えます。酸素飽和度の減少よりも先に呼吸数の増加がみられます。 酸素飽和度が98%でも呼吸数が40回/分もあれば、全く大丈夫ではありません。

 

ただし緊急事態で正確な呼吸数が必要なわけではありません。20回も22回も大差ありません。極論すれば、だいたい30回/分よりも多いかどうか、を判断すればOKです。つまり1回の呼吸が2秒より短いかどうかをチェックすればよいのです。腕時計やストップウォッチがなくても、事前に「あいうえお」と1秒で言えるように練習しておいて、1回の呼吸の間に何回「あいうえお」と言えるかどうかで判断することができます。

 

呼吸数が30回を超える原因は、それほど多くはなく、敗血症、低酸素血症(肺塞栓や心不全)、疼痛、そして不安などがあります。

 

その後、ドクターコールの際には、医師が緊急性や病態を推測するために必要な情報が、伝えられるようにします。具体的には、既往歴、入院の理由、現在の内服薬などです。電子カルテのそれらの情報を表示しつつコールすることができればよいですが、そのためには普段から患者さんの状態をまとめたサマリーを作っておくことが重要です。

 

しかし、実際に電話で状態を伝えるときは、決して時系列で物語を話すのではなく、まずは患者さんの現在の状態を話して、緊急に診察・処置が必要な状態であることを伝えます。その上で、そのほかの追加情報を、聞かれれば答えられるようにしておくことが重要です。

 

 

参考文献

志水 太郎:おだん子×エリザベスの急変フィジカル, 医学書院, 2018