不整脈でドキドキしないためには?
心臓は体に血液を送り出すためのポンプです。しっかりと収縮・拡張を繰り返し血液を全身に届けなければなりません。心臓の収縮は洞房結節という場所から発せられた電気信号が、一定のルートで規則正しく心臓全体に伝わることで、リズムを保って収縮を繰り返しています。このリズムが何らかの原因で崩れた状態を不整脈といいます。その原因やリズムの特徴によって分類された、様々な不整脈があります。そのなかには、放っておいても良いものや、緊急で治療しなければ命にかかわるものまで様々です。
高齢者の心臓は、長年休まず働いたおかげでガタがきて、しなやかで伸び縮みのある組織(心筋組織)が、硬い線維状の組織(線維組織)になります。すると、きちんと伝わっていた電気信号も滞ったり、まったく違う場所から余計な信号を発したりするようになり、リズムが不規則になります。この状態が「心房細動」という不整脈です。
心房細動は高齢者では比較的多くみられ、75歳以上の人では、5人に1人が心房細動を持っています。心房細動の診断をするためには、必ずしも心電図をとる必要はありません。患者さんの脈をとって、リズムが不規則であれば、ほぼ間違いなく心房細動です。血圧を測定する時には同時に患者さんの脈をとってみましょう。
心房細動があったからといって、それを治して規則正しいリズムに戻す必要は、必ずしもありません。リズムが不規則でも十分な血液を送り出してくれていれば良いのです。脈拍が速すぎると、十分な収縮・拡張ができず十分な血液を送り出せなくなり、時に失神することもあるため、薬で脈拍を落ち着かせます。また、胸が苦しいなどの症状がある場合には、規則正しいリズムに戻す治療をする場合もあります。ただ、高齢者では自覚症状が全くないことが多いです。
心房細動がある時に、最も大切なのは脳を守ることです。心房細動のために不規則に細かく動くと、心臓の中に血流のよどみが生じます。血液は流れていないと固まる性質があるため、血の塊(血栓)ができ、その血栓が心臓から血管へと流れて、最後に脳へ至り、脳の血管を詰めて脳梗塞を引き起こします。この脳梗塞(心原性脳塞栓症)を予防するために、血液が固まりにくくなる薬(抗凝固薬)を内服します。心房細動のある人のうち、次の点数の合計が2点以上の場合は抗凝固薬を内服することが勧められています。
心不全がある・・・1点
高血圧がある・・・1点
75歳以上である・・・1点
糖尿病がある・・・1点
脳卒中の既往がある・・・2点
参考文献:香坂 俊:極論で語る循環器内科 第2版, 丸善出版, 2014.