ミニレクチャー No. 23 経鼻胃管、如何せん

経鼻胃管、如何せん

 

嚥下障害のある患者さんでは、栄養摂取の方法として経鼻胃管、いわゆるマーゲンチューブを挿入し栄養剤の注入を行うことがあります。そのような患者さんが経口摂取を始める時に、経鼻胃管を抜去して食べることができれば理想的ですが、いきなり十分な量を安全に食べることは難しい場合がほとんどで、栄養剤の注入と経口摂取を併用することになります。すると経鼻胃管が入ったまま経口摂取をすることになり、ただでさえ嚥下障害があるのに、鼻からチューブが入っていることでさらに飲み込みにくくなっています。

この時、次善の策ではありますが、経鼻胃管のサイズが細い方が、多少なりとも経口摂取の邪魔になりません。12Fr(=4.0mm)以上の太いチューブに対して、10Fr(=3.3mm)以下の細いチューブでは嚥下への悪影響が少なかった、という報告もあります。

また、経鼻胃管を留置する時にも注意点があります。それは胃管を挿入した鼻腔(鼻の孔)と同じ側の梨状窩(食道の入り口部分)を通して留置することです。ここでもし反対側の梨状窩を通してしまうと、嚥下時の喉頭蓋の反転が難しくなったり、咽頭への食物の残留が増えたりという悪影響がでます。

鼻腔と同じ側の食道入口部を通すコツは、患者さんに、通したい鼻腔と反対側へ、くびを回して顔を向けてもらったまま挿入することです。例えば左の鼻腔から通す場合は、患者さんに右側を向いてもらって挿入します。すると左の食道入口部が広がるので通りやすくなります。

上手に挿入されているかどうかの確認には、患者さんに口を開いてもらい、咽頭壁で胃管がどのように通過しているか確認します。そこで胃管が挿入した鼻腔と同じ側の壁をまっすぐ縦に通過していれば、上手く同じ側の食道入口部を通っている可能性が高く、もし咽頭の壁を斜めに通過していれば、挿入した鼻腔と反対側の食道入口部を通過している可能性があります。

経鼻胃管挿入に伴う合併症としては、挿入時の鼻出血、気管への誤挿入、留置に伴う鼻孔や咽頭粘膜の潰瘍、副鼻腔炎、nasogastric tube syndrome (NTS)があります。NTSは経鼻胃管が食道入口部に潰瘍を形成し、さらに感染を起こして声帯の麻痺が生じ、呼吸困難を起こしたもので、発見が遅れると死に繋がることもあります。

細いチューブを使用することは、これらの合併症の予防にもなります。一方で細いチューブを使用する場合は、詰まらせないような配慮も必要です。薬の中には詰まりやすいものもあり、簡易懸濁法を利用することも有効です。

 

参考文献:谷口 洋:先生、誤嚥性肺炎かもしれません 嚥下障害、診られますか? 診断から治療まで、栄養療法や服薬指導を含め全部やさしく教えます, 羊土社, 2015.