ミニレクチャー No. 20 ICF その2

ICF その2

 

No. 6で紹介したICFについて、もうすこし詳しく説明します。

 

医療現場では、患者さんの病状を把握して、問題点を抽出し、その問題点に対するアプローチを計画・実行します。このアプローチ方法を「問題指向型システム Problem Oriented System : POS」と言います。カルテの書き方SOAPもこのPOSに基づいています。

 

患者さんの問題点の抽出やアプローチの計画の際に、例えばカンファレンスなどで、ICFの枠組みを用いると、疾患や障害のみに着目していては見えてこない問題点、もしくはその人のもつ強みがわかることがあります。

 

ICFの各項目の詳しい説明

【健康状態】年齢、性別、生活機能や障害に影響する疾患名のこと

【生活機能】

    • 心身機能・身体構造:生命の維持に直接つながるもの、運動、感覚、内臓、精神などの機能、関節や胃、皮膚、などの構造、「生物レベル」の機能
    • 活動:目的を持った個人が遂行する一連の動作からなる生活行動。日常生活動作、職業的動作、余暇活動など、「個人レベル」の機能
    • 参加:家庭内の役割、主要な生活領域や社会での役割、文化的・政治的・宗教的など広い範囲にかかわる、「社会レベル」の機能

背景因子】

    • 環境因子:物理的環境(階段や段差、建物の構造、交通機関、車椅子などの福祉機器など)、人的環境(家族、友人、周りの人の患者に対する意識などを含む)、制度的環境(法律や医療・介護サービスなど)
    • 個人因子:生活歴、ライフスタイル、価値観、興味関心、その人の個性

 

それぞれの職種で、上記の項目のうち得意な部分、詳しい部分がそれぞれあると思います。医師は【健康状態】、OTは【活動】、MSWは【環境因子】という様に。例えば、上記の枠組みをもとに作った用紙を用いて、情報をまとめてカンファレンスを実施すれば、その患者さんの全体像を把握することが容易になり、医療的なアプローチのみならず、多方面からのアプローチが可能になるかもしれません。また、疾患や障害だけに目を向けていては気がつかない患者さんのニーズに気づくことができるかもしれません。

 

参考文献:

佐藤健太Gノート Vol.4 No.2(増刊) これが総合診療流! 患者中心のリハビリテーション, 羊土社, 2017