ミニレクチャー No. 6 ICFについて

ICFについて

FIMの点数をつけると、その患者さんの生活能力がある程度わかります。しかし人が生きることを左右するのは、その人の生活能力だけではありません。例えば、寝たきり状態の人でも、大富豪で24時間介護者を雇える人と、一人暮らしで身寄りのない人では、実際の生活は大きく異なります。

病気や障害はあくまでも人生を決める一要素です。他にも、その人の性格や、家族構成、生活環境、持病、職業、趣味など様々なことが、生活・人生を構成する要素があり、それらがお互いに影響を与えあっています。新たに加わった病気やケガなどの要素は、健康状態のみならず、色々な要素に影響を与えます。例えば、病気のため仕事が続けられなくなったり、自宅が段差だらけのために、家に帰られなくなる場合もあるかもしれません。

リハビリテーションの目的は、再びその人らしく生活できるようにすることです。そのためには、リハを提供する私たちは、「その人らしさ」を理解し、皆で共有し、目標を設定しなければなりません。そのためには、「その人らしさ」を表現するための枠組みが必要です。その枠組みがICF:International Classification of Functioning, Disability and Healthという国際分類で、日本語では、「生活機能・障害・健康の国際分類」と呼ばれるものです。

ICFは「分類」とあるように、さまざまな生活に関わる要素が網羅された辞書の様なものです。例えば、「簡単な調理活動に軽度の制限がある」は、a6300.1というコードで示されます。この様にありとあらゆる生活に関わる要素にコードがつけられていますが、少なくとも実際の現場ではその様なコードはどうでも良いです。

大切なことは、それらの分類に用いられている大きな枠組みです。ICFで用いられている「健康状態」「心身機能・構造」「活動」「参加」「環境因子」「個人因子」という分類を用いてその人の負の要素(病気やケガなど)のみならず、プラスの要素にも着目し、医療的な介入のみならす、多方面から、アプローチすることを可能にします。


参考文献
上田 敏:ICF(国際生活機能分類)の理解と活用-人が「生きること」「生きることの困難(障害)をどうとらえるか、萌文社、2005.